初期のパソコン向けアダルトゲームは、とにかく分かりやすい作りでした。
ジャンケンに勝つ。
パズルを完成させる。
麻雀で相手より先に上がる。
その結果として、女性キャラクターの服が減ったり、少しエロい一枚絵が表示されたりします。
ゲーム部分とエロい場面は、ほとんど別物です。
女性がどんな性格なのか。
なぜ主人公と親しくなるのか。
そんな細かい事情は、あまり重視されていませんでした。
ところが1980年代半ばになると、ただ勝って絵を見るだけではなく、街や建物を歩き、女性を探し、話しかけ、少しずつ関係を進める作品が増えてきます。
エロゲーに、ナンパと会話が入ってきたのです。
団地をウロウロする『団地妻の誘惑』
1983年に光栄から発売された『団地妻の誘惑』は、避妊具のセールスマンとなり、団地の各部屋を回るアドベンチャーとRPGを組み合わせた作品です。
現在のコーエーテクモゲームスにつながる光栄といえば、『信長の野望』や『三國志』のイメージが強い会社です。
でも、パソコンゲーム市場が始まったばかりの頃には、「ストロベリーポルノシリーズ」として大人向け作品も発売していました。
『団地妻の誘惑』では、主人公が団地の中を移動し、住人と接触しながら商品を売っていきます。
単純にボタンを押したら女性が脱ぐわけではありません。
どこへ行くのか。
誰に会うのか。
何をすれば話が進むのか。
一応、自分で考えて動く必要があります。
もちろん、現在の恋愛アドベンチャーのような繊細な人間関係を描いた作品ではありません。
押し売り、団地妻、避妊具という題材を、そのままゲームへ入れたような大らかさがあります。
今見るとかなり無茶ですが、そこが黎明期らしいところです。
市場のルールが固まっていないので、とりあえず面白そうな題材をゲームにしてみる。その勢いが、そのまま作品になっています。
一枚絵だけでなく、話の流れもついた『慶子ちゃんの秘密』
1984年にチャンピオンソフトから発売された『慶子ちゃんの秘密』では、アダルトゲームに物語らしい流れが加わります。
作品は4部構成で、主人公は失踪した慶子を追って湘南へ向かいます。
コマンドを入力する。
選択肢を選ぶ。
建物を調べる。
そうして話を進めた先に、慶子との「ラブレッスン」が待っているという内容です。
ゲーム内には多くの場面が用意され、途中にお色気場面を挟みながら、最後の目的へ向かって進んでいきます。
野球拳のように、勝ったら一枚絵が出て終わりではありません。
主人公が女性を探す。
会いに行く。
話を進める。
その道筋にも意味を持たせようとしていました。
エロい一枚絵がご褒美である点は同じですが、そこへ向かうまでの時間が少しずつ長くなっています。
プレイヤーも、単に絵を待つだけではなく、「慶子はどこにいるのか」「次に何をすればいいのか」を考えるようになりました。
街へ出て女性を口説く『TOKYOナンパストリート』
エロゲーに「ナンパと会話」を本格的に持ち込んだ作品として知られるのが、1985年にエニックスから発売された『TOKYOナンパストリート』です。
エニックスといえば、後の『ドラゴンクエスト』で知られる会社ですが、当時は一般向けと大人向けのパソコンゲームが、今ほど明確に分かれていませんでした。
ゲームでは、所持金を使って新宿や横浜などへ移動し、街を歩いている女性へ声をかけます。
相手が振り向いてくれたら、喫茶店などへ誘って会話を始める。
名前や好みを聞く。
相手の反応を見ながら話を続ける。
うまく関係が進めば、さらに次の段階へ進めます。
ただし、何をしてもうまくいくわけではありません。
無駄に移動すれば金が減る。
会話を間違えれば何も起きない。
声をかけても相手にされない。
エロい場面を見るために、街を歩き、ナンパし、喫茶店で話をする。
今の感覚では強引に見える部分もありますが、出会いから関係が進むまでを、そのままゲームにした発想は新しいものでした。
それまでの「正しいボタンを選ぶゲーム」から、「この女性をどう口説くか考えるゲーム」へ変わったのです。
一人のヒロインを知る『天使たちの午後』
同じ1985年に登場した『天使たちの午後』は、JASTが発売した学園もののアダルトアドベンチャーです。
主人公の目的は、学園の人気者であるヒロインと親しくなること。
いきなり声をかけて成功するわけではありません。
周囲から情報を集める。
ヒロインについて調べる。
会話する。
デートを重ねる。
そうして少しずつ関係を進めていきます。
ほかの女性との行動によっては、本命ヒロインとの展開へ進めなくなることもありました。
一本道で最後の場面へ向かうのではなく、プレイヤーの選択によって結果が変わる。
ここまで来ると、後の恋愛ゲームにかなり近い形です。
『TOKYOナンパストリート』が、街で見つけた女性を口説くゲームなら、『天使たちの午後』は、一人のヒロインについて知り、関係を深めるゲームでした。
女性キャラクターにも事情や気持ちがある。
何をしても同じ反応を返すわけではない。
エロい場面だけでなく、そこへ至る話も楽しませようとしていたのです。
女性キャラクターが「絵」から「相手」になった
野球拳や脱衣パズルでは、プレイヤーが考えることは単純でした。
勝てば脱ぐ。
クリアすれば絵が見られる。
でもアドベンチャーゲームでは、その前に移動、探索、情報収集、ナンパ、会話、デートが入ります。
『団地妻の誘惑』では団地を回る。
『慶子ちゃんの秘密』では女性を探す。
『TOKYOナンパストリート』では街で声をかける。
『天使たちの午後』では、一人のヒロインとの関係を深める。
ほんの数年の間に、女性キャラクターは「勝ったら脱ぐ絵」から、話しかけ、反応を見て、関係を進める相手へ変わっていきました。
当時のグラフィックは色数が少なく、声もありません。
会話も短い文章だけです。
それでも、名前がある。
性格がある。
返事が変わる。
それだけで、一枚絵を見る意味は大きくなります。
ただ服が減るより、自分で見つけた女性を口説く方が面白い。
何度も会話した相手だから、その先を見たくなる。
この流れがさらに進むと、女性との会話だけでなく、戦闘や探索まで入ったアダルトRPGが登場します。
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