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パソコンの女の子が、ついにテレビへやってきた|家庭用ゲーム機で広がった美少女ゲームの世界

1990年代前半まで、アダルトゲームや美少女ゲームの主戦場はパソコンでした。

『同級生』や『ドラゴンナイト』のような人気作を遊ぶには、PC-9801などの高価なパソコンを用意し、フロッピーディスクからゲームを起動しなければなりません。

ゲーム好きの家にファミコンやスーパーファミコンはあっても、パソコンまであるとは限らない。ゲーム雑誌で美少女ゲームの記事を見つけても、

「面白そうだけど、うちじゃ遊べないんだよな」

と、画面写真だけ眺めていた人も多かったはずです。

ところが、パソコンで人気を集めた作品が、少しずつPCエンジンやセガサターン、プレイステーションなどへ移植されるようになります。

もちろん、成人向けの場面はそのまま出せません。直接的な表現は削られ、衣装や会話、物語の流れも家庭用に調整されました。

それでも、魅力的な女性キャラクターや恋愛、物語までは消えません。

こうして、パソコンのモニターにいた女の子たちが、家庭のテレビ画面へやってきたのです。

PCエンジンが、パソコン美少女ゲームの入口になった

パソコン向け美少女ゲームの家庭用移植が目立ち始めたのは、PCエンジンの時代です。

PCエンジンには、CD-ROMを使えるCD-ROM²やSUPER CD-ROM²がありました。カセットより多くのデータを入れられるため、音声や音楽、アニメーションを使うゲームとの相性がよかったんです。

1992年には、エルフのアダルトRPGを移植した『ドラゴンナイトII』がSUPER CD-ROM²で発売されました。

その後も『ドラゴンナイト』シリーズをはじめ、『CAL』シリーズ、『レッスルエンジェルス』『卒業』『誕生』など、パソコンで知られていた作品がPCエンジンへ移っていきます。

当然、パソコン版とまったく同じ内容ではありません。

成人向けの場面は削除され、直接的な表現もかなり弱められました。ただ、その代わりに声やアニメーションが加わり、家庭用版ならではの見せ方が増えています。

エロが減ったら、魅力も全部なくなるんじゃないか。

そう思われそうですが、実際はそうでもありませんでした。

パソコン版では声のなかった女性キャラクターがしゃべる。イベントがアニメで動く。テレビの大きな画面にヒロインが映る。

家族が近くにいたら、ちょっと遊びにくい。

でも、パソコンを持っていなかった若いゲームファンからすれば、かなり魅力的な世界だったわけです。

喫茶店の脱衣麻雀まで、自宅へやってきた

家庭用ゲーム機へ移ったのは、パソコンの美少女ゲームだけではありません。

喫茶店やゲームセンターで遊ばれていた脱衣麻雀も、自宅のテレビで遊べるようになりました。

1994年には、PCエンジン向けに『スーパーリアル麻雀PII・III カスタム』が発売されています。

アーケード版で人気を集めた女性キャラクターや脱衣アニメーションを、家庭用に調整して収録した作品です。

もちろん、ゲームセンター版の表現が全部そのまま入っているわけではありません。

それでも、麻雀に勝てば女性キャラクターの新しい姿やアニメーションが見られるという、昔ながらの“ご褒美型ゲーム”の面白さは残っていました。

以前なら、喫茶店の片隅で周囲を気にしながら100円玉を入れていたゲームです。

それが家なら、何度負けても追加料金なし。

しかも後ろを知らない客が通ることもない。

脱衣麻雀を知る世代にとっては、かなりありがたい変化だったでしょう。

ただし、家族に見つかる危険は別に残っています。

家庭用から生まれた本格恋愛ゲーム『ときめきメモリアル』

家庭用ゲーム機に広がったのは、パソコンから移植された作品だけではありません。

最初から家庭用ゲームとして作られ、美少女ゲームの人気を一気に広げた作品も登場します。

代表的なのが、1994年にPCエンジンで発売された『ときめきメモリアル』です。

プレイヤーは高校生活の3年間を過ごし、勉強、運動、部活動などで自分を成長させます。その中で女性キャラクターと出会い、デートを重ね、卒業式の日に伝説の樹の下で告白されることを目指します。

『同級生』など、パソコンの恋愛ゲームと似た部分はあります。

でも『ときめきメモリアル』は成人向けではありません。

エロい場面を見ることが目的ではなく、女の子と知り合い、仲良くなり、高校生活を一緒に過ごすこと自体がゲームになっています。

とはいえ、美少女ゲームを知っている人には、かなりなじみのある作りです。

ヒロインごとに性格や好みが違う。

自分の能力や行動によって、相手の反応が変わる。

誰と仲良くなるかで、イベントや結末も変化する。

ただ、エロがないぶん堂々と遊べる。

これが大きかったんですよね。

1995年には、グラフィックや音声を強化した『ときめきメモリアル ~forever with you~』がプレイステーションで発売されます。

これによって“恋愛シミュレーション”という遊び方が、さらに幅広いユーザーへ知られるようになりました。

パソコンで育ってきた「女の子との関係を攻略するゲーム」が、家庭用ゲームの人気ジャンルとして独立し始めたのです。

1994年、次世代ゲーム機が一気に増えた

1994年は、家庭用ゲーム機にとってかなり騒がしい年でした。

3月に3DO REAL、11月にセガサターン、12月にプレイステーションとPC-FXが登場。いわゆる“次世代ゲーム機戦争”が始まります。

ゲームの記録媒体も、ROMカセットから大容量のCD-ROMへ移り始めました。

当時は3Dポリゴンや格闘ゲームが派手に注目されていましたが、CD-ROMの大容量は美少女ゲームにもかなり向いていました。

女性キャラクターの表情を増やせる。

声優の音声をたくさん入れられる。

音楽を豪華にできる。

アニメーションまで追加できる。

画面の中の女の子を魅力的に見せたいゲームにとって、CD-ROMはかなり都合のいいメディアでした。

パソコンで人気の出た作品を家庭用へ移植すれば、メーカーはより多くの人へ販売できます。

ゲーム機側にとっても、すでに名前の知られた作品をソフトのラインナップへ加えられる。

両方にメリットがあったため、パソコンの美少女ゲームが家庭用へどんどん流れ込んでいきました。

美少女ゲームが集まったセガサターン

次世代ゲーム機の中でも、パソコン向け美少女ゲームの移植先として目立っていたのがセガサターンです。

セガサターンには、「18歳以上推奨」や「X指定・18歳未満禁止」といった区分が用意されていました。

もちろん、パソコンの成人向けゲームを無修正で出せるわけではありません。それでも、当時の家庭用ゲーム機としては、やや大人向けの作品を扱いやすい環境がありました。

そのため、『同級生if』『野々村病院の人々』『EVE burst error』『DESIRE』『Piaキャロットへようこそ!!』など、パソコンで人気を集めた作品が次々と移植されます。

恋愛もの。

サスペンス。

病院を舞台にしたアドベンチャー。

喫茶店を舞台にした恋愛ゲーム。

ひと口に美少女ゲームといっても、内容はかなりバラバラです。

家庭用版では成人向け場面を削る代わりに、新しいイベントや音声、グラフィックが追加されることもありました。

そのため、すでにパソコン版を遊んでいる人にも、

「追加シーンがあるなら、もう一回買うか」

と思わせる理由がありました。

逆に、セガサターン版から作品を知り、あとで元のパソコン版や同じメーカーの別作品へ進む人もいます。

セガサターンは、パソコンのアダルトゲームと家庭用の美少女ゲームをつなぐ、かなり大きな入口になっていたんです。

美少女とアニメにかなり寄せたPC-FX

同じ1994年に発売されたPC-FXは、セガサターンやプレイステーションとは少し違う方向へ進みました。

当時は3Dポリゴンが“次世代らしさ”として注目されていましたが、PC-FXは動画やアニメーションの再生を得意としていました。

その特徴を生かし、『卒業II』『同級生2』『キューティーハニーFX』など、女性キャラクターやアニメ表現を前面に出した作品が多く発売されます。

結果として、PC-FXは一般的な人気ゲーム機にはなれませんでした。

ただ、美少女ゲームやアニメが好きな人にとっては、ほかの機種とは違う妙な魅力がありました。

セガサターンが格闘ゲーム、RPG、美少女ゲームまで幅広くそろえたゲーム機なら、PC-FXはかなり早い段階から、

「うちは美少女とアニメで行きます」

と腹を決めたような機種です。

市場全体では苦戦しましたが、その方向性はかなり分かりやすいものでした。

エロを削っても、ちゃんと売れた

パソコンのアダルトゲームを家庭用へ移植する場合、当然ながらエロい場面は弱くなります。

では、それで作品の価値まで消えたのかというと、そんなことはありませんでした。

多くの作品が家庭用へ移植され、パソコン版以上に名前を知られるケースまで出てきます。

『EVE burst error』も、もともとはパソコンで人気を集めた作品ですが、セガサターン版をきっかけに知名度をさらに高め、シリーズ展開へつながりました。

これは、当時のアダルトゲームが、すでにエロだけで売られるものではなくなっていた証拠でもあります。

キャラクターが魅力的だった。

物語の続きが気になった。

声優の声を聞きたかった。

家庭用版で追加されたイベントを見たかった。

成人向けの場面を削っても、作品の中にはまだ十分な魅力が残っていたのです。

むしろ家庭用版でエロを薄くしたことで、物語やキャラクターの良さが分かりやすくなった作品もあったでしょう。

「アダルトゲーム」から「美少女ゲーム」へ

家庭用ゲーム機への進出は、作品の呼ばれ方も少しずつ変えていきました。

パソコンでは成人向けだった作品も、家庭用版では恋愛アドベンチャーや恋愛シミュレーションとして売られます。

さらに『ときめきメモリアル』や『サクラ大戦』のように、最初から一般向けとして作られる人気作品も増えました。

1996年にセガサターンで発売された『サクラ大戦』は、会話中心のアドベンチャーとシミュレーション戦闘を組み合わせ、大きなヒットになります。

恋愛だけではない。

戦闘もある。

アニメ的な演出もある。

声優も歌う。

女性キャラクターを中心にしたゲームは、もう成人向け作品の移植だけではなく、家庭用ゲームの大きなジャンルになっていきました。

こうして“美少女ゲーム”という言葉は、アダルトゲームだけを指すものではなくなります。

女性キャラクターとの恋愛を楽しむゲーム。

物語を読むゲーム。

アイドルを育てるゲーム。

アニメのような演出を見るゲーム。

その範囲はどんどん広がっていきました。

パソコンの中の女の子が、人気ヒロインになった

パソコンを持つ一部の男性だけが遊んでいた世界から、家庭のテレビで多くの若者が遊ぶ世界へ。

成人向けの場面は薄くなりました。

その代わり、キャラクター、音声、物語、恋愛が前へ出てきます。

家庭用ゲーム機への移植は、単に遊べる機種を増やしただけではありません。

パソコンのアダルトゲームで育ってきた表現を、一般のゲームファンへ広げる役割も果たしました。

エロい場面がなくても、ヒロインは魅力的だった。

物語は最後まで読みたくなった。

キャラクターの声や歌まで人気になった。

パソコンの中で“攻略する相手”だった女の子が、家庭用ゲームでは作品の顔となり、多くの人に知られる人気ヒロインへ変わっていったのです。

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