MENU

エロを見る前に、まず恋をしろ|1990年代、恋愛そのものを攻略するゲームが始まった

1980年代末、アダルトゲームはRPGと出会いました。

ダンジョンを歩き、敵を倒し、レベルを上げる。その先に女性キャラクターとのイベントが待っています。

ただ、女性との関係はまだ、冒険を進めた結果として得られるご褒美に近い部分がありました。

ところが1990年代に入ると、今度は女性との恋愛そのものを、ゲームとして遊ばせる作品が登場します。

どこへ行くか。

いつ会うか。

何を話すか。

誰との約束を優先するか。

エロい場面へ進む前に、まず相手と知り合い、何度も会い、少しずつ関係を深めなければならない。

プレイヤーは勇者になった次に、恋愛まで攻略させられるようになったのです。

女性を見つけるゲームから、関係を育てるゲームへ

1980年代半ばには、『TOKYOナンパストリート』や『天使たちの午後』のように、女性へ声をかけ、会話を進める作品が登場していました。

ただし、基本は正しいコマンドや会話を見つけ、目的の場面へ進むアドベンチャーゲームです。

女性と日々を過ごし、本気で誰か一人を選ぶところまでは、まだゲームの中心になっていませんでした。

女性を見つけるゲームから、女性との関係を育てるゲームへ。

その流れを大きく進めたのが、1992年にエルフから発売された『同級生』です。

夏休みの21日間を過ごす『同級生』

『同級生』では、プレイヤーは男子高校生となり、8月10日から8月31日までの夏休みを過ごします。

学校、駅、公園、店、女性の自宅。町の中を自由に歩き、さまざまな女性キャラクターと出会います。

ただし、目的の場所へ行けば、いつでも会えるわけではありません。

女性たちにも、それぞれの生活があります。

朝は学校。

昼はアルバイト。

夕方は別の場所へ移動する。

特定の日にしか会えない場合もある。

プレイヤーは町の人から噂を聞き、以前会った時間を覚えながら、どこへ行けば目当ての女性に会えるのかを考えます。

せっかく店まで行ったのに、いない。

時間を間違えた。

別の場所を回っているうちに、一日が終わった。

エロい場面どころか、今日は顔すら見られなかった。

恋愛をゲームにすると、急に面倒なことが増えます。

ただ、その面倒さがあったからこそ、女性キャラクターが本当に町の中で生活しているように感じられました。

まず相手の生活を覚えなければならない

それまでのご褒美型ゲームでは、条件が分かりやすく設定されていました。

勝つ。

解く。

倒す。

『同級生』では、何をすれば関係が進むのかが、少し見えにくくなっています。

何時に会えるのか。

どの会話が重要なのか。

昨日の出来事が今日に影響するのか。

ほかの女性と会っている間に、本命のイベントを逃していないか。

女性を攻略するには、まずその人の生活を知る必要があります。

どこへ行けば会えるのか覚える。

何度も顔を合わせる。

会話が少しずつ変わる。

最初はそっけなかった相手が、だんだん主人公を意識するようになる。

エロい場面は、その関係が進んだ先に置かれました。

最後の一枚だけでなく、そこへ至るまでの恋愛そのものがゲームになったのです。

攻略メモが、ほぼ予定表になる

『同級生』で目当ての女性との関係を進めるには、時間と場所を細かく管理する必要がありました。

朝は学校。

昼は喫茶店。

午後は駅。

夕方は公園。

当時は、分からないことがあってもネットで簡単に調べられません。

友人から聞く。

ゲーム雑誌の攻略記事を読む。

自分でノートへ記録する。

誰が何時にどこへいたのかを書いていくと、攻略メモは営業マンの訪問予定表みたいになります。

エロゲーを遊んでいるはずなのに、

午前10時、学校。

正午、喫茶店。

午後3時、駅前。

夕方、公園。

かなり忙しい夏休みです。

複数の女性を同時に進めようとすれば、予定はさらに複雑になります。

ゲームというより、時間管理シミュレーションに近いところもありました。

だんだんCGより、その子の話が気になってくる

『同級生』には、性格も生活も違う女性たちが登場します。

最初は見た目だけで、攻略する相手を決める人もいたでしょう。

ところが何度も会話していると、最初は気にしていなかった女性が妙に気になってきます。

強気に見えて、意外な弱さがある。

明るく振る舞っているけれど、本人なりの悩みを抱えている。

大人っぽく見える女性にも、簡単には話せない事情がある。

そうした一面を知ると、次のエロい場面だけではなく、その女性の話の続きが見たくなります。

ゲームを始めた理由は、もちろんエロです。

でも途中から、

「この子のエンディングを見たい」

「最後はこの子を選びたい」

へ変わっていく。

女性キャラクターが、CGを見せるための相手から、物語の最後まで見届けたい相手へ変わったのです。

最後に選べるのは一人だけ

『同級生』では、女性との関係を進め、エロい場面を見たからといって、それでゲームが終わるわけではありません。

夏休み最後の日となる8月31日。

プレイヤーは、関係を深めた女性の中から一人を選び、告白します。

複数の女性と親しくなることはできても、最後に恋人として選べるのは一人だけです。

野球拳なら、一人目を最後まで見た後、次は二人目を選べばいい。

パズルなら、すべての画像を完成させれば終わりです。

でも恋愛ゲームは、

「で、結局誰が好きなのか」

と聞いてきます。

もちろん、ゲームなので何度も遊べば全員を攻略できます。

それでも最初の一周では、妙に悩んでしまう。

ただのCG回収なら順番の問題ですが、恋愛になると「誰を選ぶか」という気持ちの問題が入ってきます。

エロゲーの中へ、プレイヤーの感情まで入り込んできたのです。

恋愛ゲームは家庭用にも広がった

『同級生』の成功後、その仕組みは『同級生2』や『下級生』などへ受け継がれました。

1995年の『同級生2』では、登場人物の物語や恋愛描写がさらに大きくなります。

1996年の『下級生』でも、町を移動しながら女性と出会い、時間をかけて関係を作る遊び方が続きました。

一方、家庭用ゲームでは1994年に『ときめきメモリアル』が登場します。

こちらは成人向けではありませんが、自分の能力を上げ、女性とデートし、卒業の日の告白を目指す恋愛シミュレーションとして人気を集めました。

恋愛そのものをゲームにする遊びは、パソコンのアダルトゲームだけでなく、家庭用ゲームにも広がっていきます。

エロがなくても、女の子との関係を育てること自体がゲームになる。

それだけ、恋愛部分が面白く作られるようになったのです。

そして1990年代半ばになると、さらに操作が減り、恋愛や事件の物語を文章でじっくり読ませる作品が増えていきます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする