昭和の終わり頃まで、ちょっとエロいゲームの代表といえば脱衣麻雀でした。
喫茶店などに置かれたテーブル筐体でコンピューターと麻雀を打ち、勝つと女性キャラクターの服が一枚減る。さらに先を見たければ、もう一度勝たなければなりません。
この「ゲームに勝ったら、ちょっといい絵が見られる」という仕組みは、その後パソコンゲームにも持ち込まれました。
ただし、麻雀は全員が知っているゲームではありません。
役を覚えなければならない。
点数計算もある。
何となく牌を押しているだけでは、なかなか勝てない。
そこでパソコン向けの脱衣ゲームでは、ジャンケン、パズル、シューティング、スロットなど、見ただけでルールが分かる簡単なゲームが使われました。
やることは何でもいい。
勝てば絵が見られる。
初期のパソコン向けアダルトゲームには、そんな分かりやすさがありました。
とりあえずジャンケンすればいい「野球拳」
初期のパソコン向け脱衣ゲームで、数多く作られたのが野球拳です。
画面に表示された女性とジャンケンする。
勝てば相手の服が一枚減る。
負ければこちらが不利になる。
基本はそれだけです。
1982年には九十九電機から、そのまま『野球拳』というタイトルの作品が発売されました。
グー、チョキ、パーの中から一つを選ぶ。
勝つ。
女性の服装が少し変わる。
またジャンケンする。
長い説明書も、複雑な操作も必要ありません。ジャンケンを知っていれば、ゲームの目的まで一発で理解できます。
当時は「アダルトゲーム」というジャンル自体が、まだはっきり分かれていませんでした。
一般向けゲームを作っていたメーカーや、パソコンショップが、お色気ゲームを普通に販売していた時代です。
今見るとかなり自由ですが、市場そのものが新しかったので、「とりあえず作って出してみる」という空気も強かったのでしょう。
ルールが同じなら、差が出るのは女の子
野球拳ゲームは、どの作品も基本的な内容がほとんど同じです。
ジャンケンする。
勝つ。
服が減る。
また勝つ。
それだけ。
となると、作品ごとの差になるのは、画面に出てくる女性キャラクターです。
どんな顔なのか。
どんな服を着ているのか。
勝ったときに、どんな反応を見せるのか。
1982年にFM-8向けとして登場し、後にPC-8801にも移植されたPSKの『ロリータ』も、基本は野球拳でした。
ただ服装が変わるだけでなく、キャラクターが頬を赤らめたり、進め方によって演出が変化したりします。
今なら小さな違いに見えますが、当時はその差が大きかった。
同じジャンケンを繰り返すにしても、無表情で服が減るだけなのか、照れたり困ったりするのかで、印象はかなり変わります。
ゲームの内容より、「この子が次にどんな顔をするか」が、続きを遊ぶ理由になっていったわけです。
パズルを完成させたら、一枚絵が見られる
ジャンケン以外では、パズルとお色気を組み合わせたゲームも作られました。
1984年にボーステックから発売された『ピーピングスキャンダル』は、細かく分割された画像を正しい位置へ並べ直すパズルゲームです。
複数の女性から一人を選び、バラバラになった絵を少しずつ完成させていく。すべて正しく並べると、選んだ女性の一枚絵を見られます。
今なら、
「画像一枚を見るために、何回パズルを解かせるんだ」
と言いたくなるかもしれません。
でも当時は、ネットで画像を検索してすぐ表示することなどできません。
パズルの先に、まだ見たことのない絵がある。
それだけで、続ける理由になりました。
パズルと女性の物語がつながっているわけではありません。
パズルはパズル。
絵はクリア報酬。
かなり割り切った作りですが、その分だけ目的は分かりやすい。
ゲームを頑張ったら、ちょっといいものが見られる。それで成立していたんです。
シューティングでもスロットでも、最後に絵があればいい
ご褒美型ゲームに使われたのは、野球拳やパズルだけではありません。
敵を撃つシューティングゲームや、スロットの絵柄をそろえるゲームにも、クリア後のご褒美として女性の画像が加えられました。
ゲーム部分は、当時すでに知られていた単純なものです。
そこへ「勝てば女性の絵が見られる」という目的を足す。
それだけで、同じゲームでも遊ぶ理由が変わります。
高得点を狙うわけではない。
ランキングに名前を残したいわけでもない。
ただ、次の画像が見たい。
ゲームが得意でなくても、目的だけは誰にでも分かります。
脱衣麻雀で使われていた仕組みが、家庭用パソコンではいろいろなミニゲームへ広がっていったのです。
会話まで脱衣ゲームにした『EMMY』
1984年にアスキーから発売された『EMMY』は、ジャンケンやパズルとは少し違う作品でした。
画面に登場する女性キャラクターと、キーボードを使って会話をします。うまく話を続けて相手の機嫌をよくすると、少しずつ服を脱いでもらえるという内容です。
今の感覚で見ると、会話型の美少女ゲームにかなり近いものがあります。
ただ、基本の仕組みは野球拳と同じです。
ジャンケンで勝つ代わりに、会話で正解を出す。
パズルを完成させる代わりに、相手の反応をよくする。
その先に、女性キャラクターの変化がご褒美として用意されています。
つまり、手段は少し進化したものの、「成功すれば続きを見られる」という考え方はそのままでした。
一枚の絵を見るまでが、やたら長い
当時のパソコンは、高画質な画像をすぐ表示できる機械ではありません。
使える色は少ない。
線も粗い。
ソフトによってはカセットテープから読み込むため、ゲームを始めるだけで長く待たされることもありました。
やっと起動したら、そこからジャンケン。
何度も負ける。
パズルなら、少しずつ並べ直す。
シューティングなら、敵を倒す。
会話ゲームなら、相手の機嫌を悪くしないよう言葉を選ぶ。
そうして、ようやく一枚の絵が出てくる。
現在なら数秒で見られる画像を、当時はゲームを攻略して手に入れていました。
だから、絵の色数が少なくても、それほど問題ではありません。
そこまで自分で進めたというだけで、その一枚に価値がありました。
初期のパソコン向けアダルトゲームでは、壮大な物語や複雑な恋愛設定はまだ必要ありませんでした。
まずゲームがある。
その先に、ちょっとエロい絵がある。
ただ、プレイヤーはだんだん「絵だけではなく、女の子の反応も見たい」と思うようになります。
そこからアダルトゲームは、ジャンケンやパズルを離れ、女性を探して話しかけるアドベンチャーゲームへ向かっていきました。
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